リリース v0.9.0

Silim Murlun
(シリム・ムールン) — Graph-Paper Layout Editor

方眼紙に実寸で置いていく、印刷物ファーストのページレイアウトエディタ。
ページをまたいで、文字は流れていく。

ブラウザで試す かんたんガイド

Silim Murlun の編集画面 — 方眼紙の上のページ枠に文書が組まれ、テキストエリアをリレーション線が結んでいる

あったようで、なかった。

レポートや資料を「方眼紙の上に実寸で組む」作り方は、 スライド作成ツールでもなんとか似せられます。ただし実際にやると 破綻する——スライド単位の世界ではページを跨げず、 テキスト量や再描画のたびにシェイプや罫線が意図せず ずれていきます。あちらでは位置が「見た目の結果」であって、 データではないからです。

ページをまたぐ文字送りは、かつてデスクトップパブリッシングの 定番機能として存在しました——連結したテキスト枠へ、 溢れた分を流し込む仕組みです。ただしそれを持つツールは、 特定 OS に縛られて開発の終わったものか、職業人のための 本格 DTP ばかり。方眼紙にノート感覚でパーツを置いていく 軽さとは対極にあります。

「方眼紙 × 実寸 × ページ跨ぎテキストフロー」の3点セットを、 軽い操作感で持つツールはありませんでした。 この空白が、Silim Murlun の立ち位置です。

ずれない。置いた場所に、残る。

配置エンジンには Kimetron Isle のワールド座標モデルをそのまま使っています。 オブジェクトの位置・寸法はスクリーンピクセルではなく mm 実寸の world 座標で保持され、ズームは「倍率」ではなく「縮尺」。 テキスト量・再描画で再レイアウトが走る設計を、最初から持ちません。

  • mm 実寸が第一級 方眼紙は 5mm 副線+10mm 主線。配置はグリッドに吸い付き、Alt 押下で一時的に吸着を外せます。ルーラーはアクティブページ枠に沿って mm 目盛りを刻みます
  • 「置いた場所に残る」は構造の帰結 位置を上書きする自動レイアウト層がないので、ずれる理由がありません。印刷は 100% 実寸で出ます

ページは、キャンバスに縦に並ぶ。

Silim Murlun のページ枠はキャンバス上の一等級オブジェクトです。 方眼紙の上に、枠線だけが見える透明な印刷範囲(A4 / A3・縦横)が 縦に等間隔で並びます。追加・挿入・削除はページ枠単位で行い、 用紙を差し替えてもオブジェクトの座標は動きません—— はみ出した分は、そのまま描画されます。

スクロールはそのままページ送りです。「別世界のスライド」を 番号で行き来する感覚ではなく、ノートを繰る感覚。 ページ枠は非印刷属性なので、出力されるのは版面だけです。

文字は、線で渡す。

テキストエリアは位置を問わず自由に置けます。任意の2エリアを リレーション線(ワイヤー)で接続すると、 そこが文字送りの経路になります。A に入りきらない分は自動で B へ。 途中挿入・削除でも連鎖して再配分され、ページ跨ぎも、 画像をまたぐ連結も、すべて同じ仕組みです。

マゼンタのリレーション線がテキストエリア同士を結ぶ画面。右側の方眼紙には矩形・楕円・直線・曲線のシェイプが置かれている

  • 編集は連鎖ペインに一本化 エリアは表示専用。クリックすると右のプロパティペインに連鎖テキスト全体が開き、そこで編集します——編集対象は常に一本のテキストなので、IME 確定やキャレット維持の事故が構造的に起きません
  • あふれは見える 末尾を超えたテキストはあふれバッジとして表示。見えない文字は編集できないので、連鎖ペインから必ず全文に届きます
  • 切断は巻き戻す ワイヤーを選択して Del(または右クリック)で切断すると、流れていた分は前のエリアへ吸い戻され、あふれ状態に戻ります
  • 正直な注記 「位置自由なフレームを任意順に連結する」モデル自体は DTP 各ソフトが既に持つ標準機能です。Silim Murlun の芯は連鎖の自由度ではなく、それが方眼紙・実寸・軽い操作感と同居する点にあります

作るための道具

  • テキストはダブルクリックで始まる 「テキストエリアを置く」明示操作はありません。用紙上をダブルクリックすると、その位置にエリアが生成され即入力モードへ——方眼ノートにペンを置く立ち上がりです
  • 画像は mm で取り込む ファイル選択 → 取り込みサイズを mm 指定(アスペクト比ロック付き)→ 実寸ゴーストをマウスで位置決め → クリック確定。ドラッグ&ドロップにはあえて非対応です
  • シェイプと頂点編集 矩形・楕円・直線・曲線。選択中の頂点グリップをドラッグして形を直接編集し、線上ダブルクリックで頂点追加・グリップのダブルクリックで削除。直線・曲線には端子(矢印・●)と線種(実線・破線・点線)を持たせられます
  • テキスト属性とフォントテンプレート 太字・斜体・下線・文字色はエリア単位で設定し、複数選択の一括変更にも対応。マルチ OS 前提のフォールバックスタックに加え、環境にない書体は警告付きで指定できます
  • Undo / Redo と書庫 doc・連鎖・ページ・設定を束ねた統合スナップショット履歴。保存形式は独自の .slm(zip: doc.json+画像バイナリ)で、タイトルと更新日時を内蔵します
  • 4テーマと日英切替 標準(OS 連動)・ライト・ダーク・クワイエット。メニュー最上段の Aa ボタンで UI を日本語/英語に切り替えられます

印刷は、ブラウザに任せる。

独自の PDF エクスポート機能は持ちません。ブラウザの印刷機能に 任せる方針で、その代わりに実寸出力を真面目に作り込んでいます—— 編集画面とは別にページごとの実寸 DOM を組み立て、 @page を用紙に合わせて動的に設定し、 「n / 全ページ」のフッターを載せます。 印刷先に PDF を選べば、そのまま PDF 化も完結します。

メニューの「印刷」はアプリ内のプレビューオーバーレイを開き、 そこからブラウザの印刷を呼び出します。 ブラウザの印刷メニューから直接、プレビュー・印刷することもできます。

印刷プレビュー — ページ枠やワイヤーは出力されず、版面だけが実寸で展開される

名前の由来

Silim はシュメール語で「安否・康健」—— シュメール・アッカドの書簡はみなこの言葉から始まる、 誰かへ届ける文書の最初の言葉です。 Murlun はウェールズ語で「壁画」 (mur=壁 + llun=絵)。 合わせて「挨拶の壁画」——読者を迎え入れて語りかける壁が 字面に内蔵されています。

内部の文字送り中間層にも名前があります。INIMBAL (イニムバル)——inim=言葉、bal=渡る・交差。 切断時の巻き戻し(逆流)まで含められるよう、一方通行の 「川」ではなく方向不問の「渡る」を選びました。

正直な現状

基本機能は一通り揃いましたが、まだ発展途上です。 残っている余地も正直に書きます。

  • 用紙は A4 / A3 のみ 縦・横の両方に対応しますが、その他の用紙サイズは現時点で対象外です
  • 表組み・画像編集なし 画像は実寸配置まで。トリミングやエフェクト、罫線テーブルは持ちません
  • ホストされた状態は持ちません ブラウザ版(GitHub Pages デモ)は読み込んだファイルをサーバーへ送信しません。保存・共有はローカルの .slm ファイルだけです
  • ローカルファースト 共同編集・クラウド保存はスコープ外。データは .slm ファイルとして手元に留まります

ソースコード

MIT ライセンスで公開しています。TypeScript + React 19 + Vite 製、 app → inimbal → kimetron(vendored workspace)の モノレポ構成です。

github.com/cuculhart/silim-murlun